『インディゴの気分』キャストインタビュー
1. 新垣樽助さん(木島理生役)
2. 松田健一郎さん(城戸士郎役)
3. 石野竜三さん(蒲生田郁夫役)
4. 古川 慎さん(久住春彦役)
後列左から 桜桃社 社長役 樫井笙人さん、沙織母・木島妹役 藤田曜子さん、沙織・美優役 中田沙奈枝さん
沙織父役 塩尻浩規さん、桜桃社 編集長役 林 大地さん
前列左から 城戸士郎役 松田健一郎さん、木島理生役 新垣樽助さん、蒲生田郁夫役 石野竜三さん、久住春彦役 古川 慎さん
1. 新垣樽助さん(木島理生役)
――収録のご感想
すごく重厚なストーリーでやる前からかなり気合が入っていましたし、石野さんをはじめ素晴らしいキャストさんの中で
やることができたので、やっている最中もテンションが上がっておりました。楽しかったです。
――再び木島理生を演じてみてのご感想
『ポルノグラファー』の時はスタートから諦観しているというか、色々と諦めているテンションだったんですけど、
『インディゴの気分』は諦めの種類が違って、まだ心のどこかで燻っている自分を自覚して苛立っている部分があり、
そういう違いをどう出そうか考えて演じました。
『インディゴの気分』の方が感情を開放する弁が緩くて、感情が表に出やすい印象でした。
――恋人や大事な人の過去は知りたい方ですか? もし過去の秘密を知ってしまったら気にしますか?
知りたいとは思わないです。
誰にでも秘密はあるじゃないですか。でもそれはそれ。その方が魅力的だし、あえて知る必要はないと思うので
特に聞くこともないですが、知ってしまったところで過去は過去なので特に気にしないかなと思います。
――父親から作家になることを反対された木島。ご自身が役者になると言った時のご家族の反応は?
絶縁はされませんでしたけど、大反対されました。(役者になったのは)もう家を出た後だったので、何かを人質に
取られるようなことはありませんでしたが、「やめとけ、やめとけ」とずっと言われていました。
――現在は?
今はもう、十何年もやらせていただいているので。まだ心配はされているのでしょうが、親でも見られるような作品に出演したら
「出ているから見てみてね」と伝えると喜んでくれます。
――リスナーさんへのメッセージ
今回は『ポルノグラファー』の過去を描いた作品なので、これを聴いた後に『ポルノグラファー』を聴くとまた違って
聴こえるかなと思います。木島というキャラクターを一段と深く掘り下げていただいたことが、演じていて本当にありがたかったです。
ものを書くこと、何かを生み出すことの大変さを蒲生田先生が喋っているセリフは、丸木戸先生の何かとちょっとリンクしているのかなと
ドキドキしながら、やっぱりクリエイター、ものを作る人はすごいなと思いながら読ませていただきました。
そして演じさせていただきました。なのでぜひそこにも注目して聴いていただきたいですし、
何よりもう一度木島先生を演じることができて幸せでした。ありがとうございます。
2. 松田健一郎さん(城戸士郎役)
――収録のご感想
前回の『ポルノグラファー』からだいぶ出番とセリフが増えて、色々喋らせていただきました。前回から城戸は
どういう人間なのかなという興味はあったのですが、今回こうやって掘り下げることができて、この役を演じられて
本当に嬉しかったなあ、楽しかったなあと思います。
――再び城戸士郎を演じてみてのご感想
年齢感をどうしようかと考えたんですが、城戸さんはそこまで変わらなくていいと言われたので好きなように
やらせていただきました(笑)
城戸は一度書くことに挫折して、未練とかしがみつく気持ちで出版業界に入ったのかなとは思うんですけれども、その中で彼は
既に他の才能を発揮しているはずなんです。彼自身は自分には何もないと思っているかもしれないけど、
例えば木島と蒲生田先生を結び付けたり、そういう人を巻き込む才能が開花していることに本人がちゃんと気づいているかどうか……。
――(石野さん) プロデューサーになったら成功する人だよね。
そうですね。そういう意味ではすごくいい仕事をしているんですよ、今回。また何かしらの機会で城戸を演じることが
できたらなと思っております。
――恋人や大事な人の過去は知りたい方ですか? もし過去の秘密を知ってしまったら気にしますか?
別に知っても知らなくても、という感じです。何かしら過去があるのは当たり前だし、ありのまま受け入れる感じですね、
罪さえ犯していなければ(笑)。とんでもない犯罪でなければ過去があるのは大丈夫です。
――父親から作家になることを反対された木島。ご自身が役者になると言った時のご家族の反応は?
僕は色んなことが中途半端で、城戸が「半端もんだな俺は」と言うように、僕も正直半端もんだなあ、なんて人間だったので、
何か本気で目指せるものがあるならそれをやってくれという感じだったので、声優になりたいと言ったら、ウェルカム、
どうぞどうぞって(笑)。集中してやりたいものがあるんだったら寧ろ安心できるみたいな感じでした。
――(石野さん) 「少なくとも罪は犯さないだろう」と思うんだよね、そういう時の親ってね(笑)
(笑)
――リスナーさんへのメッセージ
前回の『ポルノグラファー』に引き続き『インディゴの気分』で城戸をやらせていただきました。前回は久住くんの青さで
木島が変わっていく、最初は木島が飲み込むのかと見せかけて久住くんが突き抜けていくみたいなものがありましたが、
今回は大人同士のどこかねっとりとして濃厚な、恋愛とはまた違うセクシャルな世界が描かれています。
そこに蒲生田先生と木島の、城戸と木島のように肌の接触はないんですけどすごく濃い関係があって、聴きどころ、
見どころのある作品になっていると思います。蒲生田先生と木島の関係、城戸と木島の関係の比較もすごく面白いと思います。
ぜひそこを楽しんで下さい。
3. 石野竜三さん(蒲生田郁夫役)
――収録のご感想
お話をいただいて本を読ませていただいたら、僕は非常にこの蒲生田先生にシンパシーを感じましてね(笑)。
自分にも同じようなところがあって、僕も自分の舞台の脚本を自分で書いているし、周りに漫画家さんやイラストレーターさん、
小説家さんとか作家活動している人がたくさんいるので、なんとなくそういう苦労や生き様みたいなものもわかるし。
こういう屈折していると思われがちな業界で、例えばエロを文学にまで高める人ってすごく魅力的じゃないですか。
(CDに収録の)フリートークで自分の解釈を喋らせてもらっちゃいましたけど、絶対にこの人は生い立ち、
しかも自分の代の前の前から繋いでいる因縁みたいなものを抱えている人だよな、絶対この人は優しい、と思って、
魅力的な人だと感じたから(蒲生田役を)お受けしました。
木島くんとの会話、城戸くんとの会話の中で、やっぱりそうだったなと思えるところがあって、大変楽しくやらせていただきました。
――蒲生田郁夫を演じてみてのご感想、弟子の木島理生について思うこと
最初は面白半分というか、余生少ない年寄りの暇潰しでちょっと揶揄ってやろうかくらいで始めたことが、自分の想像を
超えたリアクションで返ってくるわけじゃないですか。そこを面白がっちゃうところが、気持ちの若い人だなと思って、
それも魅力の一つだと思うわけです。普通だったら「馬鹿かお前は!」「それでも男の弟子なんて取らないから帰れ」
って言うのに、面白がって「明日からまた来い」でしょ(笑)。こういう人は付き合ったら絶対面白いんだよね。
僕はなかなかそこまでのところには行ききれない人生を歩んできたので、リアルな自分ができなかったところを
やらせていただいたような心持ちになりました。
(理生は)最初はおもちゃみたいな扱いなんだけど、それでも暫く置いているうちにだんだん情が移ってくるんだよね。
もう途中から後ろの方は親子のような気持ち。奥さんには三行半突きつけられて、本当の子供も見切りつけて
よそに行っちゃったんだけど(笑)
勉強になるという理由であれなんであれ、ちゃんと自分の本質と向き合ってくれるわけでしょ、作家として、人として、
ある意味では父親として。そんな若い奴が側にいたら可愛いに決まってるんだよね。晩節の年寄りだから。
やっているうちにだんだん(理生が)愛おしくなってきて、話が進むにつれ自分に子供ができたような気持ちになっていって
面白かったです。
――恋人や大事な人の過去は知りたい方ですか? もし過去の秘密を知ってしまったら気にしますか?
今と先のことを考えたい方なので、どちらかと言うとどうでもいい。今、時間と空間を共有して楽しい人だったらそれでいい。
明日のこと、一年後のこと、そういう話ができるんだったら、もう過ぎ去ったことはどうしようもないんだからと僕は思っちゃう。
引きずる人は引きずるんでしょうけど。極端な話、犯罪でもどうでもいいやって思っちゃう。
償っていなければ「ちゃんと償ってから出直しておいで」って言うかもしれないけど。
――(松田さん) (笑)
あんまり人の過去を根掘り葉掘り聞くこともしないし、所謂業界の大先生とかはご本人が語らなくても周りからどういう過去を
持っているかというのは聞こえてくるから知っていることもあるけど、それ以外はどうでもいいやと思って。
――父親から作家になることを反対された木島。ご自身が役者になると言った時のご家族の反応は?
僕は父親と母親の反応が分かれて、父親とは死んでも理解し合えませんでした。蒲生田先生なんとなくその匂いがあって、
こういう匂いを感じる人は理解されない身内がいた気がするんです。
文才もあって教養もあって、遊びを知っているってことは、粋な人じゃないですか。女だって口説けばみんな靡くかっていったら
そんなことはないわけで。靡いてもいいなと思うだけの色気だとか、立ち居振る舞いがあって、金もあってという人じゃなかったら
女性は靡かないでしょ。そういう意味ではすごく洒脱な人なんですよ。そんな人がエロの世界にポンと軸を置いてしまうのは、
だいたいどこか屈折したところがあるんで、そんなところにシンパシーを感じるんです。
僕の父親は小学校3年生くらいの時に中学校の数学の問題を解かせて喜ぶような人でしたから。僕は勉強が嫌いだったので、
中学の1年と2年の間くらいから友達にギターを教わって、人前で弾き語りを始めたんですよ。母親はその過程を見ているから、
「ああ、そっちに行ったのか」「どうせ言っても聞かないんでしょ」と早めに諦めたんですけど、父親は死ぬまで
「大学まで出してやったのに」と言っていました。
でも僕はそういうこともあるくらいにしか思ってなくて、なのであんまり負い目もないし、話すネタになってるからいいや
くらいのこととしか思ってない(笑)
――(松田さん) (笑)
――リスナーさんへのメッセージ
こういう作品で皆さんが期待するのはまぐわってという部分もあるんでしょうけれど、それはそれで楽しんでいただいて、
人と人との心のやり取りも丁寧に描かれているので、その辺もじっくりと聴いていただけたら嬉しいなと思いました。
何回か聴き返すと色んな発見があるんじゃないかなと思うくらいの人間ドラマになっていると思います。
4. 古川 慎さん(久住春彦役)
――収録のご感想
『インディゴの気分』は『ポルノグラファー』の木島と久住よりも過去の話だったので、おまけ的な部分での
参加になりましたが、『ポルノグラファー』のその後のお話が演じられてとても嬉しかったです。
『ポルノグラファー』のラストの後にどんな会話をしていたのだろうとぼんやり想像していたものが、実際に読んで、
声に出してみると二人とも結構いい関係でやっているんだなと思えて安心しました。(補遺は)コメディの部分も多くて、
『インディゴの気分』では久住くんが知らない色々なことがあったものの、この作品の中での清涼剤のような役割に
なっているのかなと思います。とても楽しく収録させていただきました。
――再び久住春彦を演じてみてのご感想
『ポルノグラファー』で出会った時の木島さんとのいざこざがある程度なくなった後のお話だったので、木島さんへの
もやもやや葛藤がなく、すごくフラットな状態で入れたのがとても面白かったです。過去の話をいただいた資料で全部知ったので、
ここでまた新しいもやもやが出てきてしまったのですが(笑)
久住くんも過去のことは気になるだろうけれど、もし知っちゃったら受け入れるのにしばらく時間が掛かるよね、
相変わらず苦労する人だね、と思いながら演じていました。
――恋人や大事な人の過去は知りたい方ですか? もし過去の秘密を知ってしまったら気にしますか?
過去の内容によると思います。例えば「実は、麻薬シンジケートのボスだったんだ」とかだと「ちょっと待て!」
となると思うんです(笑)
――実は過去に大恋愛をしていたら?
その恋愛模様にもよると思いますが、そういう過去があったからこそ、今のその人になったというところは大事に考えて
答えを出すんじゃないかと思います。
――父親から作家になることを反対された木島。ご自身が役者になると言った時のご家族の反応は?
「声優~!?」という反応でした。正直いい顔はしていなかったです。
高校に行っている時に「声優になりたい」とは言わずに「そういう専門学校があるから行きたい」と言ったら
「あんた、それで結局何になるつもりなの?」という話になって。「とりあえずちょっとやってみたい」みたいなことを言ったのに、
「どうなるかわからないけど、社会勉強として行っておいで」と専門学校に送り出してくれたし、仕送りもしてくれてました。
なんだかんだあったけど、今はすごく応援してくれているので良かったな、嬉しいなと思っています。最近は(家族が)鼻高々と
なっていることもあるので、ちょっと抑えて欲しい時もあります(笑)。でも自慢の家族です。
――リスナーさんへのメッセージ
お久しぶりです。久住春彦でございます。
今回の木島さんと城戸さんのお話を聴いてから、もう一度『ポルノグラファー』を読んでいただけると、最初に読んだ頃と
比べてまた何か見えてくるものがあるのではないか、CDを買っていただいた方は音声を聴きながら読んでいただくと、
もっと深く『インディゴの気分』『ポルノグラファー』の世界に浸れるのではないかと思っております。
久住くんは今回そんなに出番はありませんが、「補遺」で木島さんの家族と仲良くしている描写がほんわかしていて
僕はとても好きです。
『インディゴの気分』は木島さんの作家としての人生に関わる重厚なお話ですので、それを読み終わってふっと力が抜けたところで
「補遺」をコミックスでも音声でも楽しんでいただけるととても嬉しいなと思います。何度でも何度でも聴いて下さい。