フロウフルレメディ 上
羽柴蓮司役 土岐隼一さん
獅子戸 聖役 古川 慎さん
左から:獅子戸 聖役 古川 慎さん、羽柴蓮司役 土岐隼一さん
――収録のご感想
土岐さん:原作を読ませていただいて、僕の知らない業界の話ではあったけれど、すごくリアリティーがあって、解像度の高い地に足がついたキャラクター達がいっぱいいて、読み応えがありました。関係性のリアルさも面白いし、お相手も慎さんだったし、演じるのを楽しみに思っていました。
古川さん:演じてみて改めて思ったのは、レンという人間が周囲に対してどれだけ魔性感があるのかというところがこの作品における骨子で、それに当てられる獅子戸がいる、ということでした。この部分は僕の中でとても大きかったです。作中で獅子戸が考えること、関わっている相手は、レンだけなんですよ。レンは自分の芸能活動や父親へのある目的など色々あるけれど、獅子戸の気持ちはレンにしか向いていなくて、だからそこ彼がどれくらいレンに惹かれているのかという部分が大事なポイントだなと思いながら演じていました。俯瞰で見ていると「獅子戸さん、絆されるの早いよ」「どんだけぞっこんなんだよ」って(笑)
土岐さん:(笑)
古川さん:そういうところも面白いですね。
――キャラクターに共感できるポイントは?
古川さん:ないです(笑)
土岐さん:(笑)。でも傍から見たら共通点はある気がしました。人間性が近いかは置いておいて、愛される先輩という感じはすごく似ている気がします。
古川さん:それで言うと、(土岐さんは)身の振り方ですよね。同世代なはずなのに僕にはできないムーブをしっかりできるところは、人をよく見ているからだと思うし、だからこそ(自分と獅子戸の)似ているところも言える。レンみたいなことはやっていないと思いますけど(笑)
土岐さん:蠱惑的なことはね(笑)
古川さん:(笑)。自分のあり方というものをしっかり持っているからこそ、人を見ることもできるんだろうし、そういうところが(土岐さんとレンの)共通点なのかもしれないですね。レンと獅子戸はものすごく対極の存在で、そこを描き切っていたのが原作の面白い部分なんです。なのにCDは上巻だけ(笑)
土岐さん:まだお互いの心が開き始めるかくらいのところで終わっちゃいましたからね(笑)
古川さん:そうなんですよ(笑)
――獅子戸の考えた最悪なデートは釣りでしたが、ご自身が思う最悪なデートは?
古川さん:難しいですね……。
土岐さん:最悪なデート……。冬のキャンプは絶対嫌ですね。男のやりたいこと、一人〇〇みたいなことに付き合わされるやつ。
古川さん:わかった! 乾布摩擦!
土岐さん:修験者じゃん!
古川さん:夏場の蒸し暑い山で乾布摩擦。
土岐さん:罰ゲームだよ!
古川さん:やる意味がない。
土岐さん:本当につまらないデート(笑)
古川さん:(笑)
土岐さん:あと一緒に乾布摩擦しようはセクハラですから。パワハラとセクハラですよ。他によくあるのは、微妙な距離感の間柄で遊園地に行くと、列に並んでいる時に話が弾まなくて仲が悪くなる。
古川さん:ディズニーラ〇ド。
土岐さん:そうそう。だからそれの発展型で2人でボート。逃げ場がないでしょう。
古川さん:なるほど。
土岐さん:ボートをチャーターして2人で沖合に行って、3時間海を走って帰ってくる。苦行でしかない。
古川さん:自分が誘われる側で考えるなら、2泊3日の船旅。
土岐さん:ハードだな~。
古川さん:絶対酔う。
土岐さん:酔うタイプですか?
古川さん:はい。ヘリでもいい。
土岐さん:ヘリ……。お金のある相手ですね。
古川さん:落そうと思ってめちゃくちゃ張り切ってヘリをチャーターしてくれて、夜の東京の上空をバラバラバラって飛んでいるけれど、「僕はもう限界です……」みたいな。
土岐さん:やばいね。最初のデートで吐く姿を見せるのは最悪。
古川さん:そう。そしてヘリは音がうるさいから、お互いの声が聴こえない。
土岐さん:一番意味ないじゃん! 一番楽しみたいことができない!
古川さん:
「キレイだねー!」
「なんて言ったのー!」
「キレイだねって言ったー!」
となって、最後の方は僕はぐったりしているし、相手の方は喉がガラガラだしで「もう別れよう」ってなる。
土岐さん:帰ってくる頃には仕事に影響が出る(笑)。会話も聴こえないから何も覚えていないし、覚えているのはヘリの音だけ。嫌だ。最悪ですね。
古川さん:ヘリで東京一周。
土岐さん:初手で?
古川さん:付き合って3日。
土岐さん:嫌だ~。しかも2人きりじゃないじゃん。パイロットもいるわけじゃん、ヘリの。
古川さん:最悪のデートプランですから(笑)
土岐さん:プライベート空間もなにもありゃしない。
古川さん:女の子の側からしても、付き合って3日の相手が急に具合悪くして迷惑かけられるんだから、しんどいよね。
土岐さん:母性あふれる人じゃないとダメでしょうね。ヘリに決めました。
古川さん:最悪なデートはヘリです。
土岐さん:付き合って3日でヘリをチャーター。最悪ですね。
――発売を待っている方へのメッセージ
土岐さん:最初に慎さんが仰っていた通り、それぞれのキャラクター達、例えばレンは獅子戸への、獅子戸はレンへの、相手への距離感や想いが事細かに描写されている作品で、ことレンに関しては無自覚な頑張り屋さんというのもあり、精神的に揺らぐシーンもたくさんありました。それらが漫画の中でもとても繊細に表現されていたので、そういう部分をできる限り汲んで表現できたらと思いつつ、現場でも「ここはもっとこうしよう」とディレクションをいただきながら、一つ一つ丁寧にシーンを作っていったつもりです。原作を読んでいる方は、ご自分の好きなシーンを楽しみにしていただけるし、初めましての方が聴いても素敵な作品になっていると思いますので、ぜひぜひ楽しみにお待ちください。よろしくお願い致します。
古川さん:なぜだか好きになってしまう相手には、「何か」があるんだと、そしてそれがこのお話にも繋がっているのではないかと、僕は原作を読んでいて思いました。原作を読んでいなくて、知っているキャストが出演しているからCDを手に取ってくださる方もいらっしゃると思いますが、まずは原作を読んでからCDを聴いていただきたいです。この作品は心の機微が繊細に表現されていて、音声では伝えきれないものが原作で描かれています。ぜひ原作と合わせて楽しんでください。そしてCDはとても気になるところで終わっています。
土岐さん:いますよね(笑)
古川さん:皆様の応援があればこの続きが……!
土岐さん:下巻が……!
古川さん:楽しみは焦らすものですから、まずはこのCDを楽しんでいただければいいなと思います。